クライメート・インテグレート代表 平田仁子さん
既存産業守る姿勢 転換必要
■CO2削減どう進める? 識者インタビュー
脱炭素社会の実現に向け、政府は新たな技術開発支援などを加速させようとしている。私たちの社会は、どのように二酸化炭素(CO2)削減を進めていけばいいのか。国内外の情勢に詳しい識者に聞いた。

平田仁子さん
政府は2050年のカーボンニュートラルに向けた方針で洋上風力、太陽光などの再生可能エネルギー(再エネ)の活用をうたっている。一方で、石炭火力発電の温存が大前提となっており、総花的だ。
工場や発電所などから出たCO2を回収して地中に埋めるCCSについて、政府は当初、「20年代の実用化を目指す」と言っていたが、今や30年が目標になっている。
不確定な技術を柱にし、CO2を出す製造工場や発電所などの既存インフラを利用し続けるのは日本の企業体を守るためであり、根本的な解決になっていない。迅速な対応が必要な気候変動を軽視している政府の姿勢を象徴している。
地球温暖化の最大の原因である石炭火力は最優先でなくさなければいけない。にもかかわらず、神戸などで近年、石炭火力発電所が新増設されたように、世界の潮流に逆行するようなことがまかり通っている。
既存産業を守る姿勢から脱却し、新しい環境ビジネスを育てることが必要だ。CCSや石炭火力発電のアンモニア混焼などではなく、再エネや再エネ由来の水素開発などへの投資を進めるべきだ。日本の技術力ならそれができる。
そのためには、化石燃料がビジネスの基本になっている日本の産業構造自体を変える必要があるが、機運が高まっているとは言えない。市民や企業が危機感を共有し、政府を動かさなければ、気候変動は止まらない。(聞き手・杉山雅崇)
【ひらた・きみこ】早稲田大大学院社会科学研究科博士課程修了。21年、環境分野のノーベル賞と言われるゴールドマン環境賞を受賞。