未来を変える
脱炭素への挑戦

東京大未来ビジョン研究センター 高村ゆかり教授

2024/03/04

 目標達成へ技術の見極めを



■CO2削減どう進める? 識者インタビュー


 脱炭素社会の実現に向け、政府は新たな技術開発支援などを加速させようとしている。私たちの社会は、どのように二酸化炭素(CO2)削減を進めていけばいいのか。国内外の情勢に詳しい識者に聞いた。


高村ゆかり教授



 この10年ほどで世界の太陽光の発電コストがほぼ9割減になるなど、気候変動対策の技術状況は大きく変わった。脱炭素に向かう変化と国際的な競争の中で、日本の産業や企業の競争力をいかに維持し、高めていくかが問われている。


 それゆえ、GX(グリーントランスフォーメーション)の対策が、国際社会の気候変動対策の目標を達成する道筋や技術の進展と整合しているかどうかが肝心だ。


 技術開発はいろいろあっていいが、それらがもたらす削減の規模や速度が、目標に合致するものかどうかを見極めなければならない。その技術が社会で使われることを想定し、コストやリスクの評価を中立的に判断する仕組みが必要だ。この見通しが甘いと、間違った判断をしてしまう可能性がある。


 気温上昇を抑え、気候変動の影響やリスクを低減するには、この10年ほどの対策が極めて重要だ。新たな技術だけでなく、既にある技術を社会に普及させる支援や投資も強化すべきだ。例えば、太陽光は空港などの交通インフラ設備や荒廃農地を活用して増やせる。洋上風力の展開を加速させる施策も必要だ。


 日本の強みである省エネ技術ももっと生かせる。法改正ですべての新築建物への省エネ対策が義務化されるが、既存住宅でも耐震・免震対策と併せて省エネ対策の導入を促進できれば、住民へのメリットが大きい。政策を統合的に進めるのに、自治体を中心とした地域の取り組みも重要だ。(聞き手・石沢菜々子)



【たかむら・ゆかり】京都大法学部卒、一橋大修士(法学)。専門は国際法・環境法。龍谷大教授などを経て19年4月から現職。