未来を変える
脱炭素への挑戦

地球環境戦略研究機関 特別政策アドバイザー三好信俊さん

2022/10/03

 エネルギー地産地消が目標


 2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量の実質ゼロ)を目指し、官民一体となって進む日本。ロシアによるウクライナ侵攻は日本の脱炭素にどのように影響し、将来のエネルギー政策をどう考えればいいのか。環境省OBで、現在は公益財団法人「地球環境戦略研究機関」(神奈川県)特別政策アドバイザーの三好信俊さん(64)に聞いた。(聞き手・堀内達成)




 -同機関は兵庫にも拠点がある。どんな仕事をしているのか。


 「気候変動や生物多様性などの分野で研究と政策提言をしている。兵庫には関西研究センター(神戸市中央区)があり、淡路市と連携して再生可能エネルギーの導入促進などを計画した。神戸大学で脱炭素の授業を行い、学生の意見を取りまとめて発信もした」


 -これまでの日本の脱炭素政策をどう評価するか。


 「揺れ動く国もある中、脱炭素強化の方向に着実に進んできたと思う。スピードが遅い速いなどの議論はもちろんあるが、環境部門の意見がエネルギー政策に反映されるようになっている。時代の評価に堪えうるはずだ」


 -ロシアによるウクライナ侵攻などで、脱炭素の取り組みが世界中で足踏み状態のように見える。


 「短期的にはそう見えるかもしれないが、中長期的には脱炭素の流れは揺るがない。欧州では化石燃料からの脱却に完全にかじを切っている。日本は化石燃料への依存度を下げざるを得なくなり、国内資源である再エネをこれまで以上に重視するしかないだろう。脱炭素の観点で見ると、侵攻が脱炭素の取り組み強化につながった面があると思う」


 -今後の日本の課題は。


 「『(二酸化炭素の排出に価格を付けることで削減を促す)カーボンプライシング』の仕組みをどうするのか議論が必要だ。12年に導入された地球温暖化対策税に関わった経験もあり、注視している」


 「将来はエネルギーの地産地消を目指すべきだ。海外に依存すれば、日本のお金が国外に流れる。国内で循環すれば、経済政策的にも意味がある。50年までの脱炭素は待ったなしで、そういった方向に進んでいくと思う」


【みよし・のぶとし】1958年生まれ、高砂市出身。淳心学院中高、東京大学法学部卒。80年に環境庁入庁、大臣官房審議官や総合環境政策局長など歴任。