環境省近畿地方環境事務所地域脱炭素創生室 福嶋慶三室長
環境省は政府目標の2050年に先駆け、30年度までの脱炭素化に取り組む「先行地域」づくりを進める。今春、第1弾となる全国の26件が決まり、兵庫県では姫路、尼崎、淡路市の官民連携事業が選ばれた。こうした自治体を中心とした取り組みをどう後押ししていくのか。4月に同省近畿地方環境事務所に新設された「地域脱炭素創生室」の福嶋慶三室長(46)に聞いた。(聞き手・石沢菜々子、撮影・中西幸大)

カーボンフリーに向けた自治体の取り組みについて解説する環境省近畿地方環境事務所環境対策課長の福嶋慶三さん=神戸新聞社
-先行地域づくりの狙いや選定の基準は。
「モデルとなりうる地域に集中してお金や人を投入し、30年にゼロカーボンのエリアを全国で100カ所以上つくろうとしている。地域に応じた方法があると思うが、多様なモデルをつくり、50年に向けドミノ倒し的に広げたい」
「選定は評価委員会が計画の実現可能性などで判断する。第1弾で選ばれたのは、応募79件の3分の1程度。計画を練り、地元関係者の合意を得ていく作業が必要だ」
-再生可能エネルギーの導入や省エネ対策を進める自治体を支援している。
「脱炭素の取り組みが進む自治体には、庁内の縦割りを突破していこうとする姿勢を感じる。逆に、環境部門だけでやろうとして行き詰まる自治体もある。地域の脱炭素化はまちづくりそのもので、脱炭素対策を地域活性化や課題解決にもつなげてほしい」
-具体的には。
「例えば、災害時は避難所となる体育館。老朽化して建て替えるとき、停電に備えて屋根に太陽光パネルを載せたり、蓄電池を設置したりすれば一石二鳥で合理的だ。各自治体で庁内に横串を通して意見を出し合うことで、さまざまな可能性が出てくる」
-経済産業省と連携し中小企業支援にも取り組む。
「国も各省庁の垣根を越えて対応し、昨年、各省庁の近畿支部との『きんき脱炭素チーム』ができた。大企業は脱炭素対策を加速しているが、コロナ禍もあって中小企業は遅れている。そこで、例えば金融機関の営業マンが中小企業への説明に使えるリーフレットを近畿経産局と一緒に作った。関係機関と連携し、企業の取り組みのステージに応じた対応をしていく」
【ふくしま・けいぞう】 1975年生まれ。2002年環境省入省。11年7月から3年間、尼崎市に出向。21年4月から同省近畿地方環境事務所環境対策課長(22年4月から現職兼務)。