COP26参加「気候ネット」 伊与田昌慶・客員研究員
世界の潮流、取り残される日本
世界各国が「脱炭素」への対応を迫られている。地球環境を巡って今、何が起きているのか。昨年10~11月、英国グラスゴーで開かれた国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)に参加した、環境団体「気候ネットワーク」(京都市)客員研究員の伊与田昌慶さん(35)に聞いた。(聞き手・石沢菜々子)

COP26について「2030年までの対策に、より力点が置かれることになった」と話す伊与田昌慶さん=大阪市内
-世界が脱炭素にかじを切った背景は。
「気候変動への危機感だ。気候関連災害の発生件数は過去50年で5倍に増え、それに伴う経済損失は1970年代から2010年代にかけて7倍になった。今後、さらに激しい災害が頻発すると世界気象機関(WMO)が報告している」
-COP26では、世界の平均気温上昇を2100年までに「産業革命前から1・5度未満」に抑えるべく取り組むとした成果文書が採択された。
「現在、産業革命前からの地球の平均気温上昇は1・1度。各国が打ち出している対策を実施したとしても、2100年までに2・7度まで上がるとされる。1度程度の上昇でも、これだけの激変だ。さらなる上昇で、どれほど壊滅的な事態になってしまうか」
「こうした待ったなしの状況を踏まえ、COP26では事実上、1・5度未満を目指すことに合意した。そのためには、世界の二酸化炭素(CO2)排出量を10年から30年までに45%減らし、50年ごろまでに実質ゼロにしないといけない。さらにCO2以外の温室効果ガスの大幅な削減も必要、というのが共通認識だ」
-危機を避ける見通しは立ったのか。
「今ある対策では目標の1・5度未満にはまだまだ足りないということを科学が示している。今回、国際社会が決意を示したことで、首の皮一枚でつながっているようなものだ。今年のCOP27までに、各国がさらなる目標や対策の強化を打ち出せるかどうかが問われている」
-日本の取り組みは。
「COP26での岸田文雄首相は『勝負の10年』と強調しつつも『1・5度目標』に触れず、削減目標を強化する政治的な意志表明もなかった。石炭火力を温存しようとする姿勢も批判を浴びた。世界では『脱石炭は当然。天然ガスや石油もやめるべき』という動きがあり、取り残されている」
【いよだ・まさよし】1986年、愛知県生まれ。2011年、京都大大学院修了(地球環境学修士)。同年から気候ネットワークに在籍。22年1月から国際環境NGO「350.orgJapan」のコミュニケーション・コーディネーターを務める。