大学生と考える、脱炭素のライフスタイル アシックス(神戸市中央区)
脱炭素社会の実現に向けて、行政や企業活動が対応を迫られる中、私たち一人一人が暮らしの中でできることは何か。神戸新聞社と連携協定を結ぶ神戸大学の学生が、兵庫県内などに拠点を置く7事業者の取り組みを記者とともに「取材」し、脱炭素のライフスタイルについて考えた。
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■靴製造、変革への思いに共感
「脱炭素」の波は、私たちが身に着けるものにも及びつつある。スポーツ用品大手のアシックス(神戸市中央区)は今年、製造から廃棄までに排出する温室効果ガスの量を世界最少にしたスニーカーを発売する。国際人間科学部2年の廣兼響子さん(20)ら学生3人が、担当者から開発の経緯などを聞いた。
同社は、協力工場などを含むサプライチェーン(供給網)全体での二酸化炭素(CO2)排出量を、2030年に15年比で63%減を目指す。
さまざまな取り組みの中でも「大きな一歩」(同社)になるのが、今年販売を予定するスニーカー「GEL-LYTE3CM(ゲルライトスリーシーエム)1・95」だ。
靴底と中敷きにサトウキビ由来などの素材を使用。耐久性などの品質や機能を維持しつつ、独自構造で従来モデルよりパーツを大幅に減らした。製造や輸送には再生可能エネルギーやバイオ燃料を使う。
業界では、回収された繊維製品などから再生する「リサイクルポリエステル」の利用が進む。同社でもランニングシューズの新製品の9割以上に使われている。CO2削減に向け、サステナビリティ統括部・荒井孝雄さんは「今後、シューズのリサイクルの仕組みもつくりたい」とする。
取材を終え、廣兼さんは「高い品質を保ちながら価格を抑えるなど、『消費者や業界全体を巻き込みながら意識を変えていく』という思いが伝わりました」と話した。(石沢菜々子)