未来を変える
脱炭素への挑戦

大学生と考える、脱炭素のライフスタイル ケルン(神戸市東灘区)

2023/03/22

 


 脱炭素社会の実現に向けて、行政や企業活動が対応を迫られる中、私たち一人一人が暮らしの中でできることは何か。神戸新聞社と連携協定を結ぶ神戸大学の学生が、兵庫県内などに拠点を置く7事業者の取り組みを記者とともに「取材」し、脱炭素のライフスタイルについて考えた。


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■応援したい、パン廃棄削減策 


 個性豊かなベーカリーが集まる神戸で、食品ロス防止に向けた取り組みが進む。文学部3年の大坪日向子さん(21)と国際人間科学部2年の松本奈々さん(20)は、神戸市内で8店舗を展開する「ケルン」(神戸市東灘区)の壷井豪社長に、その戦略を聞いた。


ケルンの店舗で、壷井豪社長からツナグパン(手前)について説明を受ける(左から)松本奈々さんと大坪日向子さん=神戸市中央区北長狭通1(撮影・中西幸大)



 同社は2021年12月から、製造当日に売れ残り、廃棄対象になるパンのうち、傷みにくい商品を詰め合わせた「ツナグパン」(10~15個入り、税抜き1700円)を販売する。冷凍保存する人も多く、売れ行きは好評という。


 この商品には、さらなる仕掛けがある。木製のエシカルコイン(100円分)が1枚ついており、次回の買い物で使える。一方で、同社は売り上げと同じ額面分のコインを福祉施設に寄贈し、入居者に店舗で使ってもらう。


 アプリなどではなく、コインにしたのは、高齢者も子どもも使いやすいからだ。若い頃から閉店後のパンの大量廃棄に違和感を抱いてきたという壷井社長は「誰も取り残さず、継続できる仕組みを徹底して考えました」と話す。導入初年度の廃棄率は11%から2%に激減した。


 「パン職人の現場や社会的に弱い立場にある人らとの深い関わりがあってこその仕組み。現場を知る大切さを考えさせられました」と大坪さん。松本さんは「福祉施設にパンを届けるのではなく、コインを通じて自立を支援するという考えを知り、消費者として応援したいと思いました」と話した。(石沢菜々子)