未来を変える
脱炭素への挑戦

【詳報】気候変動を語ろう、考えよう 高校・大学生ら討論イベント

2022/07/16

 


 気候変動問題やSDGs(持続可能な開発目標)について、メディアが若い世代の声を聞く討論イベント「神戸の私たちから地球の未来を変えるはじめかた。」が6月18日に開かれた。脱炭素のキャンペーン報道に取り組む神戸新聞社と、SDGs特集号を刊行する講談社(東京)の女性誌『FRaU』(フラウ)編集部が企画し、神戸市内の高校生や大学生約30人がオンラインと対面で意見を交わした。司会進行は、「ソーシャル・グッド・プロデューサー」の石川淳哉さんが務めた。(まとめ・石沢菜々子)


SDGsを考えるプロジェクトに参加した神戸市内の高校生や大学生=神戸市中央区、神戸新聞本社(撮影・小林良多)



■取り組んでいる/風力発電研究改良目指す


 神戸学院大経営学部3年の越智優斗さんは、企業と連携してフェアトレード(公正な貿易)のコーヒーの販売を促進するゼミ活動を紹介し、「消費者に興味を持ってほしい」と話した。


 六甲アイランド高校からは、SDGsのポスターを制作する芸術系美術・デザインコースの生徒や課題研究で風力発電を学ぶ総合科学系の生徒らが参加。総合科学系2年の松浦琉成(りゅうせい)さんは「効率良く発電する方法を研究したい」と語った。


 葺合高校2年の仁木良流歩(らるふ)さんは世界の貧困や水問題などSDGs関連の授業を受けてきたといい、「若者たちが学んだ情報を他の人たちにも発信していくことが、課題解決に向けて重要では」と指摘した。


 「防災緑地」について調べる神港橘高校3年の高畠那奈子さんは「阪神・淡路大震災後、神戸がどんなまちづくりをしてきたのか同世代に伝えたい」と話した。



■メディアに望む/科学的情報詳しく発信を


 葺合高2年の植田清花さんは「生活が問題にどれだけ密接に関わっているか、それをどれだけ感情に訴えられるかが、問題を解決していく上で大事だ」と話し、映像化などイメージしやすい手法を求めた。また「自分の生活を中心に考えがちだが、それでは解決にならない。問題を多角的にみられるよう、世界で起きていることもしっかり伝えてほしい」と注文した。


 六甲アイランド高2年の山下ゆめさんは「科学的に何がどう気候変動などにつながっているのかが伝わっていない。もっと科学的な情報が伝われば、各自が根拠をもって取り組むことができる」と指摘。神港橘高1年の高橋侑利(ゆり)さんは、自動車などで利活用が進む水素について「二酸化炭素を出さないのでとてもいいと思うが、事故が起きたときにとてつもなく爆発するかもしれない。もっと情報を伝えてほしい」と話した。


オンラインも利用しながら高校生や学生らが意見を交わした=神戸市中央区、神戸新聞本社(撮影・小林良多)



■悩んでいる/社会の関心どう高める?


 六甲アイランド高2年の藪本依帆里(いほり)さんは「通学中に見ている海は、ごみが浮くなどしてあまりきれいでない印象」という。関心を持つプラスチックごみを集めるボランティア活動について「(現状では)部活などで高校生が参加しにくいので、授業の一環にするなどして学べないか」と提案した。他にも、植栽などSDGs関連の地域イベントに参加しにくい-との声が上がった。


 多くの人に関心を持ってもらう方策やその難しさへの意見も相次いだ。


 葺合高2年の松永咲菜さんは「森林を何ヘクタール破壊したらどれくらいの影響があるのかなど、具体的なデータを探そうとしても、なかなか見つからない」と指摘。「細かいデータがないと、環境問題を身近に感じにくい。そうしたデータを基に、多くの人に関心を持ってもらうための解決策について学びたい」と話した。



■大人に言いたい/効率優先の生活見直して


 気候変動問題は、若い世代がその影響を大きく受けることになる。六甲アイランド高2年の中村奏音(かのん)さんは「社会問題と現実の生活を切り離さないで」と訴えた。例えば、各家庭での洗い物。節水に取り組むべきなのに、実際には水を多く使った方が早く済ませられる。「学校で学んで家で改善しようと思うのに、効率を重視して実践できていないことが多くある」と強調した。


 葺合高2年の今成希海(のあ)さんは「もっと自覚や責任感を持って」と注文した。新型コロナウイルス感染防止を例に挙げ、「感染拡大の当初、各自がマスクをしっかりしていたのは、危険性や影響が目の前にあったから。環境問題は、何が悪いのか、何が自分たちに影響を与えるのかが分かっていない」と分析。「情報を集め、何がどう自分たちにつながっているのかを深く理解できれば、みんなが行動できる」と話した。


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異常気象頻発、世界中で対策急務/司会の石川さん解説


 イベントでは冒頭、進行の石川さんが、SDGsに対する認知度が高まる一方、気候変動問題が深刻化している現状を解説した。


司会進行の石川さんが、SDGsに対する認知度が高まる一方、気候変動問題が深刻化している現状を解説した=神戸市中央区、神戸新聞本社(撮影・小林良多)



 SDGsは、持続可能な開発目標を意味する「SustainableDevelopmentGoals」の略。すべての国連加盟国が2030年までに達成すべき目標として、15年の国連サミットで採択された。貧困や飢餓の撲滅、不平等の解消、気候変動への対策など17分野で構成されている。


 地球温暖化による気候変動は、近年の台風の大型化や干ばつ、熱波といった異常気象などに影響しているとされる。


 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が4月に出した最新の報告書では、産業革命前と比べた気温上昇の幅を1.5度に抑えるには、世界の温室効果ガス排出量のピークを遅くとも25年以前にする必要があるとした。


 さらに、各国の政策強化がなければ、人為的な温室効果ガス排出量が増加し続け、「今世紀末までに3.2度の温暖化をもたらす」などと警告。各国の対策強化が急務となっており、私たちの行動変容も求められている。