経済
ノンアルならぬ「のんカニ」 「ほぼカニ」のカネテツが新商品 甲殻類アレルギーに配慮、開発者の狙いは
カニかまぼこ「ほぼカニ」で昨年末に日本ネーミング大賞を受賞したカネテツデリカフーズ(神戸市東灘区)が3月、常識を覆す新たなカニかまを投入した。その名は「のんカニMSC」。英語で「ない」を意味する「NON(のん)」を冠したという。ちょっと待て。カニかまって、本物のカニに近づけようとしてきたのでは…。担当した同社開発部の杉浦茉実さん(27)とマーケティング部の荒川楓さん(25)に狙いを聞いた。
■普通のかまぼこになってしまうんじゃ…
「のん」を使ったのは、多くのカニかまに入るエキスなどカニやエビ由来の原料を省いたから。開発は、甲殻類アレルギーの人たちの「食べたい」ニーズに向き合うことから始まったという。
荒川さん「カニかまには、カニが入っていないと思われるんですが、ほとんどの商品にはエキスが入っているんです。だからアレルギーがある方は召し上がれない。エキスなしのカニかまがあったら食べてもらえると思いました」
昨夏に開発を開始。主原料には、持続可能な漁で取った水産物を示す「MSC認証」のスケトウダラのすり身を100%使った。
荒川さん「成分をゼロにはできないですが、エビ、カニを餌として食べている可能性がなるべく低いスケトウダラ100%で作ってほしいと開発担当者にお願いしました」
■「優しいカニかま」から「カニかまヒーロー」まで
ただ、風味を出すために欠かせないエキスは使えない。
荒川さん、杉浦さん「エキスを入れないと、普通のかまぼこになってしまうんじゃないかなって不安で…」
杉浦さん「本物のカニのアミノ酸を分析したデータを見ながら、複数の調味料の配合をいろいろ試してみて近づける努力をしました」
何度も試食を繰り返した末にたどりついた風味は、社内でも感動を持って受け止められた。次は名称。「優しいカニかま」から「カニなしかにかま」、果ては「カニかまヒーロー」まで。
荒川さん「名前を考えたのは『ほぼカニ』がネーミング大賞を受賞した頃で、すごく意識しました。4、5文字くらいにして、一発で特長を分かってもらうにはって。手に取ってもらいやすく優しいイメージにしようと、ひらがなも入れました。パッケージは品質保証の部署と何度もやり取りして、アレルギーのある方に分かりやすいように注意書きが目立つ表示にしました」
杉浦さん「名称は私もいいなと思いました。『ほぼカニ』の姉妹みたいに思ってもらえるかなって」
■可能な限り対応
「のんカニ」の生産設備ではエビ、カニを含む製品を作っているため、アレルゲンフリーは名乗れない。とはいえ、大人になってから発症する割合も高いという甲殻類アレルギーに可能な限り対応できたと手応えを感じているという。
荒川さん「エキスなしでカニかまの味が出せたので、カニの味は知っているのにアレルギーで食べられなくなった方はもちろん、アレルギーのない方にも食べていただきたいです。アレルゲンフリーの商品作りに向けた第一歩を踏み出せたと思います」
「のんカニMSC」は8本入り。スーパーなどで販売している。参考価格324円。