ひょうご経済プラスTOP 経済 「空飛び海潜る」ドローンで養殖場撮影 魚の成育や網の破れチェック、漁業者の負担軽減へ 姫路・坊勢島で実証実験

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「空飛び海潜る」ドローンで養殖場撮影 魚の成育や網の破れチェック、漁業者の負担軽減へ 姫路・坊勢島で実証実験

2023.01.30
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坊勢島近くの養殖場に降下する水空合体ドローン=姫路市家島町沖

坊勢島近くの養殖場に降下する水空合体ドローン=姫路市家島町沖

坊勢島近くの養殖場に降下する水空合体ドローン=姫路市家島町沖

坊勢島近くの養殖場に降下する水空合体ドローン=姫路市家島町沖

昨年11月の実証で、水中ドローンが撮影した養殖場内部の映像。ボラが泳ぐ様子が写っていた(KDDIスマートドローン提供)

昨年11月の実証で、水中ドローンが撮影した養殖場内部の映像。ボラが泳ぐ様子が写っていた(KDDIスマートドローン提供)

 空を飛び、水中にも潜る「水空合体ドローン」で、魚の養殖場や定置網など海中の様子を撮影する実証実験が、姫路市家島町の坊勢島周辺で行われた。映像は遠隔で見ることができ、現在は漁業者が網を引き上げたり潜水したりして確認している作業の負担軽減につながる。漁業は全国的に後継者不足が深刻で、持続可能な「未来の漁業」を実現する取り組みとして、実用化が期待される。

 実証は、兵庫県と新産業創造研究機構(NIRO、神戸市中央区)が行うドローン社会実装促進実証事業の一環で、KDDIスマートドローン(東京)が昨年11月~今年1月に実施。空中と水中用の2機を組み合わせた機体を開発し、坊勢漁業協同組合が協力した。

 今月27日には、養殖場での実証実験を報道陣に公開。島から1・8キロの距離を自律飛行し、特産の「ぼうぜ鯖」約7千匹を飼育する養殖場に着水。切り離された水中ドローンが遠隔操作で海中を潜行し、魚の成育状況や網の破れの有無などを鮮明な映像で確認した。

 同漁協によると、サバやカタクチイワシ、ボラを育てる養殖場は島周辺に多い時期で120カ所ほどある。夏から秋には毎日、漁業者が潜って行う点検作業をドローンで代替できた。

 実証では、マアジやタイなどがかかった定置網の様子も確認。現状は7、8カ所ある網を漁業者が1日おきに引き上げるが、ドローンを使って捕獲状況を確認すれば、最適なタイミングで引き上げられる。

 ノリの色落ちや不漁の原因とされるリンや窒素などの栄養塩不足を解消するために海底を耕す作業の効果も、経過を撮影することで確認できた。

 同漁協は県内有数の漁獲高を誇るが、組合員数は2002年の601人をピークに22年は460人まで減り、後継者不足の解決や燃料費高騰への対策が求められる。

 同漁協の竹中太作組合長(53)は「実用化されれば、船を出すための燃料費や、人件費、手間が省ける。スマートな漁業ができると期待している」と話す。

 KDDIスマートドローンは今後、機体の改良を進め、24年の商品化を目指す。漁業のほか、橋脚といった水中インフラの点検などでの活用を見据えている。