ひょうご経済プラスTOP 経済 インフレ手当、兵庫県内企業にも拡大 一時金が中心、ベアに踏み切る企業も「収益増を社員にも還元」

経済

インフレ手当、兵庫県内企業にも拡大 一時金が中心、ベアに踏み切る企業も「収益増を社員にも還元」

2022.11.30
  • 印刷
神戸新聞NEXT

神戸新聞NEXT

神戸新聞NEXT

神戸新聞NEXT

神戸新聞NEXT

神戸新聞NEXT

 止まらない物価高騰を受け、従業員の生活を下支えしようと、「インフレ手当」などを支給する企業の動きが、兵庫県内でも広がり始めた。食料品や生活必需品の価格、光熱費などの上昇に対する負担感を和らげる狙い。一時金が中心だが、中には基本給を一律に引き上げるベースアップ(ベア)に踏み切る企業も出てきた。

■2度目の一時金支給

 「物価が上がってきており、皆さんの生活をしっかり支えたい。手当や一時金ではなく、ベアで報いる」

 化学メーカー、石原ケミカル(神戸市兵庫区)の酒井保幸社長は、10月下旬から国内主要拠点を回り、社員らに語りかけた。

 同社は12月から、社員の基本給を一律5千円引き上げ、海外拠点や中国子会社でも同水準の昇給を行う。パート従業員の時給も10円上げる。対象者は計約270人に上る。

 同社のベアは16年ぶり。背景には、テレワークの普及に伴うパソコンやサーバーの需要拡大がある。主力の電子部品用金属表面処理剤などが好調で、2021、22年3月期の連結売上高と純利益が続けて最高を更新し、利益水準も底堅い。従業員の士気を高め、優秀な人材獲得につなげたい考えだ。

 物価高騰に伴い、今年2度目の一時金支給を決めたのはビーフン最大手のケンミン食品(神戸市中央区)。12月9日、社員とフルタイム勤務のパート・アルバイト計253人に「生活応援一時金」を出す。本人に加え、家族1人当たり1万円を支給する。7月にも社員約190人に在籍期間に応じて1万~5万円を出したが、対象を広げた。

 今回の支給総額は約400万円。原材料などのコスト増が響き、23年2月期の連結営業利益は前期比大幅減となる見込み。だが高村祐輝社長が「従業員と家族を守りたい」と支給を決めた。広報室は「家族が多く、出費が増える従業員に手厚くし、生活を支援できれば」としている。

■役職の上下なく

 ポンプ製造の帝国電機製作所(たつの市)は12月2日、全従業員約350人に手当を支払う。正社員は12万円、嘱託職員らは6万円で、出費がかさむ年末に向け、早めに生活費を補助しようと判断した。国内四つの子会社でも同様に支給する。

 10月には産業用ベルト大手の三ツ星ベルト(神戸市長田区)もグループの全従業員約4300人に特別協力金を支給。国内は8万円、海外は各国の賃金水準に応じた相当額を出した。

 新型コロナウイルス禍からの経済回復に伴い業績は好調で、池田浩社長は「役職の上下なく、今までの頑張りに還元した」。今後についても「利益が出れば株主にも還元するし、社員にも還元する」と話す。

     ◆

 帝国データバンクが11月11~15日に実施した全国調査では、「インフレ手当」を一時金や月額手当として支給する企業は、予定や検討中を含めて26・4%(近畿は26%)と4分の1にとどまった。取り組むとした企業でも一時金で出すとの回答が3分の2を占めた。

 同社は、手当などの支給が広がり切らない状況について「コスト上昇分を販売価格に転嫁できず、収益が低迷していることが要因となっている」と分析する。(大島光貴)