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軟らかい杉も割れにくい「木割れ最強釘」建築業界で注目 アマテイが開発、胴部分に特殊な加工

2022.09.15
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アマテイの「木割れ最強釘2杉対応」(同社提供)

アマテイの「木割れ最強釘2杉対応」(同社提供)

 くぎ大手のアマテイ(兵庫県尼崎市)が販売する高機能くぎが建築業界で注目を集めている。その名も「木割れ最強釘2杉対応」。胴部分に特殊な加工を施して、打ち込む際に杉材が割れにくくし、打った後も抜けにくいよう工夫した。ツーバイフォー(壁組み工法)住宅向けに使う。新たなくぎを開発した背景には、国内に多い杉の需要を住宅建材として高め、森林利用の循環を促す狙いもあるという。二酸化炭素(CO2)を吸収・削減することで、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量の実質ゼロ)に貢献したい考えだ。

 ひときわ名前の主張が強い、この製品。建築業者などプロ向けに開発した。打ち込む際に杉の割れを防ぐことを最も重視した。「2」の前の初代「木割れ最強釘」が開発されたのは2010年。ツーバイフォーで主流のSPF材(トウヒ・マツ・モミ類)向けとして人気を得ている。

 木割れ最強釘という名称は、社内で専門チームを立ち上げ、全員でアイデアを出し合って決めた。単なる木割れ防止ではなく、「最強」と銘打ったのは、「インパクトを前面に出したかったから」と、当時を知る社員は振り返る。

 ネーミングに込めた思いとともに、実用品としての性能の高さはしっかりとユーザーに伝わっているようだ。初代のくぎは、今年8月までの累計販売本数が新製品としては異例の56億本に達した。今では、同社の看板商品の一つに成長している。

 いきおいに乗って、企画した第2弾が、現在人気上昇中の「木割れ最強釘2杉対応」。その名の通り、素材が軟らかく、くぎが抜けやすいとされる杉材をターゲットに、安心して使えるくぎを目指した。

 杉にこだわった背景には、カーボンニュートラルに貢献したいという思いも。樹木は成長過程でCO2を吸収するため、国産材を積極的に利用しながら苗木を植える持続的なサイクルは有用との見方が多い。杉は人工林森林の面積のうち4割以上を占め、その有力な候補となる。

 木割れ最強釘2杉対応の開発には1年かかり、昨年11月に発売した。先端部分にリングが連なるような凹凸を付けて、その形や長さを微調整することで、杉材に打ち込みやすく、木割れしにくく、抜けにくいくぎを実現。間隔を狭めて本数を増やして打つ必要がなくなるため、コスト削減につながる。さらにデリケートな杉材に対応したことで、SPF材でも同様の性能を発揮でき、木材ごとに釘や工具を使い分けなくて済むようになった。施工期間の短縮にも寄与する。

 杉材用のくぎとして、初めて国指定証明機関の性能証明も取得。独創的な製品の販路開拓を支援する兵庫県の「ひょうご新商品調達認定制度」の認定も受けるなど、好評だ。

 アマテイの佐藤亮社長は「杉の使用率が上がるには今しばらくかかるだろう」としながらも、「国産木材の利用促進に寄与する、国の方針を後押しする製品になった。ユーザーのコストや手間を省くこともでき、引き合いも多い」と自負する。

 同社は他にも台風などで効果を発揮する瓦用のネジリングなど防災を意識した製品の販売も進めている。佐藤社長は「(今後も)社会貢献を意識した経営をしていきたい」としている。(大盛周平)