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審査委員 網本雅生
(NPO法人神戸デザイン協会理事長)
昨今のインバウンドの増加とともに「フードダイバーシティ(食の多様性)」という言葉を多く耳にするようになった。宗教上の理由から食べることのできる料理に制限がある人の他、ヴィーガンやアレルギーなどを理由に、食べない、食べられないものがある人は多い。特に「食べたい」のに食べられないアレルギーの人たちには、「美味しいもの」を提供しているメーカーとしては、その課題を解決すべく新商品の開発などに益々力を入れている。
今回の最優秀賞作品のエントリー企業である六甲バターもその一社。QBBブランドでもお馴染みの「チーズ」を主力商品としている会社。その広告のキャッチフレーズが『チーズと言えない植物性について』と、あえてチーズではないと宣言する刺激的なフレーズと、ほぼ文字だけの紙面に圧倒され、思わず熟読させられた。そしてまもなく開催される関西万博のレストランにも出かけてみたいと思わされた。
クリエイター賞を受賞した『創業72年広告「私たちのチタン」編』は、チタンの元素記号である「Ti」の「i」に見立てた80名のいろんな分野の社員代表のみなさんが、会社からのメッセージを代弁しているデザインには目を見張った。インナーブランディングとしての社員さんのモチベーションアップにも一役買ったに違いない。
金賞受賞の「阪神甲子園球場100周年」は甲子園にゆかりのある有名漫画のキャラクターを集める手法、銀賞受賞の「ありがとう、スマスイ。―スマスイは、スマシーへ。―」は須磨海浜水族園の思い出がたくさん詰まった世代の方へのメッセージ、「マルエフ 47都道府県おつかれ生新聞」は47都道府県それぞれの1年のニュースを振り返る手法、いずれも秀作である。
デジタル化の波により、新聞広告の影響力は低下しているといわれているが、まだまだこれからも、さまざまなアイデアと新たな活用方法であっと驚くものを期待したい。